日本の茶道には、形式や礼儀が重んじられる独自の文化が息づいています。
その中でも重要な役割を果たすのが「蹲(つくばい)」です。今回は、蹲の魅力とその種類についてご紹介します。
さまざまな蹲を通じて、日本の文化の奥深さを感じてみましょう。

蹲とは
蹲(つくばい)とは茶室前の露地に設置された手水鉢(ちょうずばち)のことで、日本の茶道において重要な役割を果たします。
茶道では茶室に入る前に身を清めることが作法となっており、手や口を清めるために、水を張った手水鉢が設置されています。
蹲は俗世から離れ、茶室という特別な空間へ向かうという結界の意味もあります。
蹲は、手水で手を洗うときに「つくばう(しゃがむ)」ことからその名前がつきました。茶会にもてなされた客が身をかがめて手を清めたことが始まりです。
現在では茶室を持つ家が少なくなったため、お庭の装飾として用いられることが多くなりました。佇まいに趣があるため、和風の庭園を造る際の添景物として、静かな和の空間を演出します。
蹲の種類
蹲には伝統的なものから、創作の蹲までさまざまな種類があります。それでは、ISHIMOで取り扱っている蹲をいくつかご紹介いたします。
■知足の蹲
円柱形の石の表面に、口を中心として「五、矢、疋、隹」と彫られています。これは「吾唯足知(われただたるをしる)」と読む、禅の言葉です。「今あるもので十分であることを知りなさい」ということを表しています。

こちらの蹲は銭型とも呼ばれています。中央が空洞の四角で、その周囲に文字が刻まれている形は日本の古銭を模しており、富と繁栄を象徴しています。
■鉄鉢型の蹲
鉄鉢型は、シンプルで丸い形をしています。もともとは頑丈な鋳鉄製で日本庭園や寺院で実用的な目的で使用されており、その耐久性のある素材は強さと回復力を象徴しています。

■棗型の蹲
植物の棗(ナツメ)の果実に似ていることから、その名がついたと言われています。大正時代に人気を博した形です。

■自然石型の蹲
石の自然な形を生かした蹲です。石本来の美しさが際立ち、お庭に調和します。

■銀閣寺型
京都の有名な銀閣寺にちなんで名付けられた銀閣寺の蹲は、安定を象徴する四角い形をしています。庭園によく見られる自然で流れるような形とは対照的で、空間に建築構造の感覚を加えています。
■袈裟型
袈裟型の蹲は、伝統的な仏衣である袈裟の形に似た、独特の流れるようなデザインが特徴です。寺院の庭園やその他の神聖な空間でよく見られる石は、純粋さと精神的な洗練を象徴しています。
蹲は、日本の茶道における伝統的な意味合いを持つだけでなく、現代のお庭おいてもその美しさと趣を活かす役割を果たしています。
お庭に蹲を取り入れることで、静かな安らぎを感じられる空間を創り出すことができるのではないでしょうか。
ISHIMOでは、他にもさまざまな種類の蹲を取り扱っています。
ぜひ一度、オンラインショップを覗いてみてください。